貸借対照表(バランスシート)※以下B/S
どの様な企業のB/Sでも、必ず (1)資産 (2)負債 (3)資本 の金額だけで見ることができます。たとえばアパレルメーカーのオンワードとワールドの2社を比較してみます。


オンワードの2009年2月期の総資産(A:資産合計)は2962億円、資本(B:資本合計)は1568億円です。一方ワールドの同じ時期の総資産は2252億円、資本は428億円となっています。この2つの数字だけでも、2社の状況の違いを見ることが出来るのです。
企業の安定性を図るこの自己資本比率は、財務指標の代表的なものといわれており、数値が高いと、一般的に借金が少ない傾向があります。この自己資本比率が経営の存続を決めるほど、重要なポイントとして扱われています。
先ほどのB/Sを更に「流動」と「固定」に分けて分析してみます。ここでいう「流動」とは大きく「1年以内に現金化される」ものなどが含まれ、それ以外の「1年以上現金化されない」ものは「固定」に分類されます。
例えば売掛金、在庫、仕掛品などの基本的に1年以内に現金に変わる資産は「流動資産」(C)として扱います。また「資産」のうち、自社の社屋や、設備、工場など長期にわたり所有するものは「固定資産」として扱います。
一方、負債にも「流動」と「固定」の分類が必要で、例えば一年以内に返済しなくてはならない借入金は「流動負債」(D)に、一年を超えて返済する借入金は「固定負債」に分かれます。詳しい分析をするケースでは、同じ借金でも、短期で借りたものか、長期で借りたものかで、企業の資金繰りの安全性を見極めたりすることが可能です。
では実際にオンワードとワールドの連結決算におけるB/Sを比較してみましょう。
オンワードの資産は2962億円でしたが、うち流動資産が989億円、固定資産が1973億円。
流動負債は923億円、固定負債は454億円、自己資本は1568億円。
ワールドの資産は2252億円、うち流動資産は825億円、固定資産は1427億円。
流動負債は705億円、固定負債は1118億円、自己資本は428億円。
それではまず、自己資本比率を計算してみましょう。

オンワードが52.94%、ワールドが19.02%となります。
自己資本比率とは、総資本に占める自己資本の割合を示す比率で、会社が調達した資金の安定度を示す指標です。自己資本は返済義務の無い資本であるため、この比率が高いほど資金の安定度が高い企業といえます。
次に、企業の短期的な資金繰りの状態を表す流動性比率を計算してみましょう。

オンワードが107.12%、ワールドが117.04%となります。
流動比率が100%を割ると、資金繰りに問題が発生している可能性があるという指標になります。
同じようなアパレルメーカーでも、財務分析を加えるとその企業が抱える課題、問題点が見えてきます。
損益計算書(profit&loss)※以下P/L
B/Sに対してP/Lといわれるのが、損益計算書。企業の一定期間の経営成績を表しています。一般的には1年間の事業活動における「収益」と、収益を上げるのに掛かった「費用」を差し引きしたものが「利益」として表示されます。
企業の1年間の成績とも言える、P/Lのポイントは一つ。黒字か赤字なのかです。事業を行った結果、儲けが出ない会社は自由競争社会においては退場を迫られたり、社員のリストラやなど厳しい結果が待っています。
P/Lは売上高(収益)−費用=利益で表記されていますが、いくつかのプロセスを経て、同じ黒字(赤字)でも、本業なのか、本業外での結果なのかが判る仕組みとなっています。例えば、本業の家電商品が人気商品となり販売が好調だった場合の儲けと、所有している株式が高く売却出来た場合の儲けとは、同じ金額だったとしても評価は別のものだという判断ができます。本業が赤字であっても、所有する土地や株式を売却し、何とか黒字化させるといったケースはよく聞く話です。
P/Lには「5つの利益」が表記されています。
(1)売上総利益(粗利ともいう)
(2)営業利益
(3)経常利益
(4)税引前当期利益
(5)当期利益
の5つがそれにあたります。トヨタ自動車が年間で2兆円の利益を突破しそうだというのは「営業利益」の話です。この営業利益は、企業の本業での儲けを示す利益で、事業が利益を生み出すそのものの評価となっています。
それではP/Lの上から順に見てみると(1)売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた利益といえます。メーカーなどが、材料を仕入れたりした場合、原材料などが売上原価に含まれています。この段階で赤字が出ている企業は要注意と言えましょう。
(2)営業利益は(1)の売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益。従業員の給料や、いわゆる「経費削減」などと使われる「経費」の事です。営業利益を上げようとして、人員削減や、給料カット、文具の節約など働く従業員にも影響が及ぶ事が多いです。
(3)経常利益は(2)の営業利益に、企業の本業外、例えば、受取利息や所有株式の配当金を加算し、銀行に支払う利息やなどを差し引いて算出。企業の総体的な利益を示しているといえます。
これに土地の売却益(損)や、貸倒れ(相手先が倒産して、焦げ付きが発生したものを損金処理する)がでた場合などの金額を一部又は全部を差し引いたものを(4)税引前当期利益と言います。
そして、最後に法人税や、住民税、事業税などを差し引いて残ったものが最終利益とも呼ばれる(5)当期利益です。
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損益計算書を見るポイントは各項目の数値を分析することもそうですが、時系列で捉えることも大切です。少なくとも前期、前々期と比較して、成長性、安定性を見る事が必要です。 |
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5つの利益の公式 |
計算方法 |
(1)売上総利益 |
売上高−売上原価 |
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(2)営業利益 |
(1)−販売費及び一般管理費 |
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(3)経常利益 |
(2)+本業以外の利益−外部への支払い |
※企業の相対的な利益 |
(4)税引前当期利益 |
(3)+特別利益−特別損失 |
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(5)当期利益 |
(4)−税金 |
※最終利益(純利益) |
【貸借対照表と損益計算書を使いこなす】
前項では、B/Sの資産合計は企業の規模を示すことを説明しました。更にP/Lでは売上と各段階の利益の関係も理解できたでしょう。それでは、B/SとP/Lの関係を「回転率」を使って分析します。
例えば、総資本回転率は

で算出します。
総資本=年間売上高だと1回転。回転率が高ければ少ない資本で稼ぎが大きいという、効率的な経営が行われていると言えます。
オンワードの場合は0.88回転、ワールドの場合は1.52回転です。
【良い赤字と悪い赤字】
バブル経済崩壊後、100兆円ともいわれた不良債権の処理が行われました。例えば、有価証券や、不動産の含み損などで巨額の損失が表面化し、企業によってはその損失処理に耐えられず、経営破たんを招いてしまったケースも少なくありませんでした。しかし一方では、世界的な会計基準の見直しが始まり、減損会計といって将来の損失を前倒しで処理を行うルールが適用され、大幅な赤字決算を出してでも、身軽な企業体にならざるを得ない時代となりました。結果、こういった赤字処理が企業の評価を高める見方が広がり、「赤字」後に急速に業績が好転する「V字回復」といった言葉も聞かれる様になったのです。
キャッシュフロー計算書
従来の貸借対照表と損益計算書に加えて、このキャッシュフロー(C/F)計算書が重要な項目となっています。経営活動で、現金をいくら生み出しているかを現すC/F計算書は、
(1)営業活動C/Fは本業の活動から生み出した現金の増減
(2)投資活動C/Fは不動産などの固定資産や株式などの有価証券の取得や売却などで投資活動による現金の増減
(3)財務活動C/Fは銀行からの借入や、社債による調達と返済による現金の増減
に分かれています。特に(1)営業C/Fに注目して、プラスであることを確認したいところです。この項目がマイナス、しかも過去何期にもわたって続いている状況は大変厳しいと判断せざるを得ません。

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